鳴門塩業株式会社は鳴門の海水を原料に塩を作っている会社です。

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いにしえより受け継がれる、塩づくりの精神。
環境に配慮した設備。
そんな当社のこだわりをご紹介します。

採かんの仕組み

採鹹の作業(さいかん)=濃い塩水を採取する作業

入り浜式塩田での採鹹作業は通常1軒前の塩田を2等分し、半分ずつ(替持ち)行われる。
替持ちというのは、1軒前の塩田を2等分し、1日のうちに半分の塩田で採鹹作業を行い、片方の半分で準備作業を行うことを言う。採鹹作業と準備作業を交互に行い、2日で全部の塩田の採鹹を行うのである。

①排水作業荒浜起こし

①排水作業荒浜起こし
採鹹(さいかん:以降は採かんと表示)で一番困ることは雨であった。雨が降るとそれまでの作業がすべて無駄になり、雨水を排水してから作業をやり直さねばならなかった。
1)排水作業
雨後に行う最初の作業は排水である。排水は干潮時に行い、干潮が不十分であったり廃水が不十分であった場合、桶門の内側にある水車で排水を行った。
2)荒浜起こし
起浜(おこしはま)ともいい、塩田の排水が完了しても塩田面の撒砂は降雨に打たれ洗われて塩田面に付着している。そのままでは採かん作業に使用できないので、まず塩田の上を「引き」で引いて撒砂をかき起こしてゆく。この作業を荒浜起こしといい、通常5人がこの作業を行った。

②浜引作業

②浜引き作業
前回の採かん後、塩田にまかれた砂は厚さ1cmぐらいで、上部は乾燥して塩分が付着しているが、下部は海水がそのままの状態でしみついている。このため、砂の乾燥や塩分付着の効率を高める為「引き」をひいて砂をかき混ぜて行く。この作業を浜引き作業という。
この作業で、塩田の床面を掻くので毛細管現象も盛んになる。主として女子又は丁稚(奉公人)がこの作業を行い、少しでも多く増産する為1日に何回と無く、縦・横・斜め(8種類の方向の引き方があった)に「引き」を引き、「均し」(ならし)の作業を行った。
浜引き作業を進めると、撒砂は次第に細分され、塩分が付着して直径1~2cm位の塊が出きる。これをさらに「板」や「均し」で撒砂の塊を小さく壊して塩分の付着効率をいっそう高め、少しでも濃度の高いかん水が採取できるようにした。採かん作業の内、この浜引き作業が大半を占める。

③小切り

③小切り(こきり)
写真右側の人物の作業が「小切り」。切り出しとも言う。
塩田に撒砂は2回分が用意されている。その量は、高島・三ツ石(鳴門市鳴門町)の塩田では沼井台(ぬいだい)1台につき、平均夏場で7石1斗(約1280Kg)、冬場で6石3斗(約1140Kg)であった。冬場の撒砂の量が少ないのは、日照時間が少なく採かん量が少ない(採かん濃度も薄い)為である。
この撒砂を半分ずつ使用する。半分は塩田面にまき、あと半分は前回の採かん後沼井台から掘り出して沼井台の両側に積み出してある。

④台たたき

④台たたき
写真左側の人物の作業が「台たたき」。

「台うち」(塩田道具)で沼井台の「簀菰」(すごも)をたたいて、簀菰に付着している砂を落とし、濾過しやすくする作業。

⑤持浜作業

⑤持浜作業
浜入れとも呼ぶ。
浜引き作業が終わった後、塩分が付着した砂(「鹹砂」かんしゃと呼ぶ)を「柄振」(えぶり)でかき集めて沼井台に入れる作業を言う。鹹砂は重く、沼井台脇の小切りした砂をなるべく踏まないように持ち込むため、相当な腕力を必要とした。
10人が3組に分かれて一通りごと持浜作業・浜投げ作業を同時に行い、分担した1つの通りが終わると、次の通りへと作業を進めた。
日照の最盛時を過ぎ、太陽が傾き始めると撒砂が湿気を帯びてくる為、それまでに全部の通りの作業を終わらせる必要があった。

⑥浜投げ作業

⑥浜投げ作業
鹹砂をかき集めた後の塩田面に、沼井台脇に小切りして広げてある砂を「投木鍬」(なげきんぐわ)ですくって平均的に振りまく作業のこと。持浜作業をした後の塩田面が乾燥しないうちに、直ちに別の作業員3人が浜投げ作業を行った。この作業は最も力と熟練を要する激しいものであったので、採かん夫の優秀な者が行い、最高の賃金が支給された。

⑦ふね踏み

⑦ふね踏み
持浜作業で沼井台に入れた砂を凹凸のないように「均木鍬」(ならしきんぐわ)でならし、平均的に踏み固める。砂に付着した塩分がむら無く全部溶解して濾過できるようにするための準備作業である。この仕事が充分できないと、濾過するときに沼井台の簀菰(すごも)がはずれてしまうこともある。ふね踏みはすべて女子が行った。

⑧潮掛け作業

⑧潮掛け作業
浜投げ作業を行った塩田では、直ちに1回浜引き作業を行い、「板引き」を行った。その後、床面の毛細管現象を誘発する為、浜溝の海水を掛杓(かけじゃく)で撒砂に振り掛ける作業のこと。
浜溝から遠い所は「担桶」(にない)浜溝の海水を汲み「掛桶」に入れて掛け杓で潮掛け作業を行った。
潮掛け作業は通常採かん日には塩田の乾燥の甚だしいときだけ行い、準備には午前と午後の2回行った。

⑨しおとり

⑨しおとり
前日の採かんの継続だが労力の配分上翌日の早朝4時ごろから朝役として「しおとり」を行った。
沼井台の脇の受壺から、前回のかん水採取後、ためてあった「藻垂水」(もんだれみず:塩分濃度はボーメ比重6度位)を「藻垂杓」(もんだれしゃく)で約5斗(約90Kg)くみ上げて沼井台の中の鹹砂に注ぐ。この作業を「藻垂上げ」(もんだれあげ)と言う。
これだけでは、乾燥した砂に吸収されるだけで鹹水は出てこない。さらに浜溝から海水を担桶(にない)で6斗(約108㍑)くみ上げてきて注ぐ。この海水を「荒水」といった。
こうすると砂に付着した塩分が濾過されて、かん水が受壺に4斗(約72㍑)程たまる。
昭和4年頃受壺が1石(約180㍑)入りに改良されてからは、藻垂水も1石に増えたので、これをくみ上げて注ぐだけで4~5斗(72~90㍑)のかん水が受壺に出来た。
下図はしおとりの仕組みを図化したものです。

しおとりイメージ

⑩ふね掘り

⑩ふね掘り
「坪掘り」とも言う。
沼井台の中から藻垂水をとった後の砂(たれかす)を「坪掘木鍬」(つぼほりきんぐわ)で掘り出し、沼井台の両側へ積む作業を行う。この作業を「ふね掘り」という。
この作業のとき、浜投げ作業によって砂が撒かれている。ふね掘りで掘り出された砂は、小切りが行われ、次の浜投げ作業に使用されるまで乾燥される。

写真:湯本 博 氏 写真集「塩田」より
資料:徳島県郷土文化会館 民族文化財集「鳴門の塩」より

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